どうしてトランスファーファクターが広まらなかったか
どうして世紀の大発見が陽の目を見なかったか。
このように優れたトランスファー因子の発見がどうして有名でないのか、不思議に思う方も多いと思います。トランスファー因子が発見されたのは、今から50年以上も前の1949年のことでした。当時は結核菌が猛威をふるい、抗生物質がなかったため、結核で死ぬ人が絶ちませんでした。世界中の医学者は、結核によって起こる感染症の原因究明に取組んでいました。
シャーウッド・ローレンス博士もその中の一人でした。
博士は、結核菌に感染して結核菌に対する免疫を付けていた患者さんの血液を、結核菌に感染していない人に輸血した際に、血液中のどのような成分が、どのようにして免疫物質を伝達するかを調べていました。
まず血液中の免疫細胞を分離し、次にリンパ細胞を破壊して細胞の内容物を大きさ別に分け、免疫物質の伝達を司っている成分を調べていく中で、博士は「免疫物質が、免疫情報を伝える物質により未感染者の体内に移動する」ことを発見しました。
博士はこの免疫情報伝達物質を「トランスファーファクター(因子)」と名付けました。
輸血によって結核菌に対する免疫を作ることができれば、結核の感染率は激減し、多くの人の命が救われることになります。
博士の発見は、免疫学的には画期的なものであり、人類学的にも大きな朗報となるはずでした。しかし、重要な働きが解明されたにもかかわらず、トランスファー因子が臨床の現場で生かされることはなく、世紀の発見は、なかなか陽の目を見ることはありませんでした。トランスファー因子が活躍の場を与えられなかった最大の理由は、輸血という方法でしか免疫を得ることができなかったことでした。血液型が不適合の場合には輸血をすることはできません。しかも、感染者と未感染者をコーデイネイトするのは、困難を極めます。以上のことから、トアンスファー因子は、免疫強化物質としての特性を生かされないまま、いつしか忘れられた存在となっていました。
